多様化が進む個品単位のRFID導入(導入動機)

 個品単位のRFID装着は世界中の図書館で行われており、貸出し、返却の自動識別機能、防犯機能、在庫管理、紛失書籍の追跡、施設入出チェックなど、世界中の図書施設でRFID導入の成果が報告されている。また、公共施設以外にも、サービス業、小売業者などにもRFIDの導入・普及の進展のテンポが加速している。これらの分野のRFID導入と使用方法は世界中ほとんど類似しており、スマートカードに世界中で利用されている13.56MHzと同じ周波数を利用する傾向がある。

 しかし、個品単位向けRFIDの最大の可能性は世界の各地域で多様な市場と商品が混在する日用消費財や郵送小包などの分野にある。欧米の小売業者でRFID導入の気運が活発化しており、RFID導入の牽引役としての役割を果たしている。

 欧米では小売側がRFID装着を積極的に、なかば強引な手法で展開しており、RFID導入コストに関してはサプライヤー側で負担することを求めている。また、欧米の小売業者は、個品単位のRFIDにより、在庫切れの改善と売上増進の可能性に期待を寄せており、日用消費財のシステムという観点では、サプライヤー側と小売側双方の利害が一致している。こうしたRFID導入の進展とともに、スケールメリット追及の傾向が強まり、しだいにサプライヤーから小売業者へ主導力が移行するであろう。既にサプライチェーンや垂直統合製造を行っているの小売業者にとっては、RFIDによる個品管理への適合性が高い。

 一方、東アジアでは、流通や大規模小売業者よりも大手の製造業者のほうがRFIDに対して積極的であり、その適合性も高い傾向がある。これら製造業者は欧米での販売の比率が高く、RFIDに関しても欧米の方式への依存度も高いため、前向きに取り組んでいる。東アジアでは、製造業者をはじめ、RFID導入による生産性効率向上を追及する傾向が強く、政府主導でユビキタス志向のRFID開発、RFID装着の実証実験が盛んに行われている。韓国と日本では製造段階で書籍にタグ付けをする実証実験が行われている。これは欧米ではまだ見られない。





市場牽引要因、障害要因分析


 個品単位のRFID装着には、経済性、運用可能性、利便性といった多くの検討課題があるため、欧米においても準備段階といえる。これら検討課題を含め多様な要求のすべてを充たす周波数帯や設計法があるわけではないが、RFIDの仕様に関する明確な根拠と妥当性に関する要請は確実に高まっており、世界的な標準化がもとめられる。

 なお、当面、注目が集まる分野としては、DVD、ビデオ、カミソリ刃、化粧品、医薬品とアパレルなどがあげられている。日本、欧州および米国での共通の見解として、ファッション商品はタイミングよい値引きや品替が必要な為、アパレルは特に有望であるとしている。

 マッキンゼーの研究では、コスト削減と売上増加の効果は高額アパレル商品と低価格のアパレル商品ではほぼ同じとしているが、これには反論がある。IBM、アクセンチュア、フォレスターリサーチ、MITオートIDセンターおよびその他機関が独自に投資額回収に関する研究をした結果、1セントのタグおよび適度に低コストのシステムとソフトウェアであれば、2年内に満足のいく投資額回収ができるというものであった。ただし、測定事例が非常に少ないため、これら投資回収にはさまざまな意味合いがある。

 安全の強化、犯罪の減少(商品の不正流用、盗難、偽造など)はRFID導入でも二次的なものと考えられがちであり、まだ充分な検証がなされていない。

 プライバシー保護団体は数年前にバーコードやスマートカードに対するのとほぼ同じ手法でRFIDをターゲットとしている。なかには脅威を誇張し、事実を歪曲して伝える団体もある。プライバシー問題については国によって事情が異なる。英国では予想されるプライバシーの脅威をあまり懸念しない。犯罪やテロを抑止し、交通事故の状況証拠となるため、その対価として快く許容している。





今後の展開予測


 総じて、消費財のサプライヤ、郵送小包を扱う業者、軍事組織ではコスト削減とサービスの側面でメリットが期待でき、小売業者にはコスト削減と売上向上が強い動機要因となっており、実際、RFID導入でそうした恩恵を受けるであろう。直近の見通しとしては高コスト、高マージン製品が注目される。小売店の在庫切れの取り組みに関しては、代替率の低い商品が注目される。

 日用消費財における個品単位でのRFID装着に関するこれまでの経緯を見ると、まず最初に運搬用台車にタグが装着され、続いて、ウォールマート、アルバートソンズ、Lowes、ベストバイ、テスコ、カルフール、メトロなどの小売業の要求でケース、パレットへのへの広がりを見せてきた。今後も小売業主導で個品単位でのRFID導入の進展に弾みがつくであろう。

 プロクター&ギャンブルでは、2010年には150億の個品、400億のパレットとケースにタグが装着されると予測している。我々はこの予測は現実味があると考え、2015年時点で1兆の個品にRFIDが装着されるであろうと推測する(同時点のバーコードの10%〜20%に過ぎない)。この予測は2008/9年頃1セントタグが実現していることを示している。MITオートIDラボとEPCグローバルは、タグ用シリコンチップが0.2セントで入手可能になると説明しているが、我々が確認できた範囲では、チップメーカーはそのような展望にはあまり興味を示していない。新しい回路プリント技術や弾性表面波デバイスといった他の代替案によってそのシナリオも変化するであろう。

 個品単位のタグ装着には、無線ネットワークやシステムが必要だが、既にケースやパレット単位のタグ貼付の恩恵として、ネットワーク内に無線ネットワークがあり、必要なシステムが部分的にすでに存在していれば、コスト面でも個品単位のタグ装着の整備は促進され、高価格品目の分野におけるRFID進展につながるであろう。こうした事情を踏まえ、2010年には150億アイテムにタグが貼付されると我々は予測する。但し、整備の進展具合によっては予想外の進展も起こりえるであろう。